Tier 2: 現代の標準技術推論・プロンプティングHF 340 votes
思考の連鎖Chain-of-Thought推論創発

思考の連鎖(Chain-of-Thought)プロンプティングによる大規模言語モデルの推論創発

「段階的に考えてみましょう」。中間の思考ステップを自然言語で例示するだけで、数理・論理タスクの推論精度を爆発的に引き出した現代プロンプティングの原点

Chain-of-Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models

論文の書誌情報と関連リンク

読み方の2つの軸

現在:しくみ × 全体像

語彙 使うことば・数式・例え方

直感数式なし
しくみ基礎的な数式
原論文原論文の表現

深さ 研究のどこまで読むか

核心肝だけ
全体像背景から評価
読み解く前提から限界

この2本は、本文下のスライダーからいつでも変更できます。

概要

この論文は、言語モデルへ答えだけでなく途中の考え方も書いた見本を示す「思考の連鎖」を調べました。著者らは、十分に大きなモデルでは、通常の見本より算数、常識、記号操作の問題で正答率が上がったと報告しました。一方、小さなモデルでは効果が弱く、途中説明が正しい理由を示すとは限りません。

言語モデルへ問題と答えの見本を渡す方法では、答えだけを示すのが一般的でした。この研究では、答えに至る途中の文章も見本へ加えます。たとえば算数の文章問題なら、必要な数を拾い、順に計算し、最後に答える流れを見せます。著者らは、複数の規模のモデルと課題を比べ、大きなモデルで効果が現れやすいと報告しました。これはモデルの調整値を変えず、入力の書き方だけを変える方法です。

思考の連鎖は、問題、途中の説明、答えを一組の見本として言語モデルへ渡す方法です。著者らは、算数の文章問題、常識を問う問題、記号を操作する問題で、答えだけを示す見本と比較しました。モデルの規模が小さいと改善が見られない、または悪化する場合がある一方、十分に大きいモデルでは複数の課題で正答率が上がりました。ただし、書かれた途中説明をモデル内部の本当の計算過程とみなせるかは、この実験では確かめていません。

CoT(Chain-of-Thought)プロンプティングは、Few-shotの例題に中間推論ステップを含めることで、大規模言語モデルの多段階推論能力を活性化させる手法です。

Weiら(Google Research, NeurIPS 2022)によるCoTプロンプティング論文。中間思考系列の自己回帰生成による計算グラフ拡張、創発的スケーリング特性、および多領域ベンチマーク評価を解説します。

Chain-of-Thoughtプロンプティングの数理的定式化、トランスフォーマー計算深度の動的拡張メカニズム、創発的スケーリング則、エラー分析、およびテスト時推論最適化への展開を解読。

Jason Weiら(Google Research, NeurIPS 2022)によるCoT論文は、Few-shotプロンプトに中間思考ステップを導入することでLLMの複雑推論を活性化させる研究です。

原論文(Wei et al., arXiv:2201.11903)に基づき、Chain-of-Thoughtプロンプティングの定式化、計算メカニズム、PaLM/GPT-3/LaMDAでの実験結果、頑健性検証を解説します。

Chain-of-Thought論文(Wei et al., 2022)の学術的解読。自己回帰展開の結合確率定式化、トランスフォーマーの動的計算深度スケーリング、創発的相転移の計量分析、および下流タスクにおける詳細な誤り分類。

Jason WeiGoogle Research
Denny ZhouGoogle Research
著者をもっと詳しく知る

論文と確認可能な公式情報に基づき、著者の所属と研究背景を掲載しています。

Jason Wei
所属
: Google Research
学歴
: Google Researchリサーチサイエンティスト(当時、現OpenAI)。
研究の系譜
: 大規模言語モデルの創発的能力(Emergent Abilities)の第一人者。
代表的な論文
: Chain-of-Thoughtプロンプティングの着想と実証実験の主導
Denny Zhou
所属
: Google Research
学歴
: Google DeepMindプリンシパルサイエンティスト。推論・推論スケーリング研究グループリーダー。
研究の系譜
: Least-to-Most Promptingや自己一貫性(Self-Consistency)等の推論技術を相次ぎ開発。
代表的な論文
: 推論創発ダイナミクスの理論化と研究指導

なぜ歴史的イノベーションなのか

NeurIPS 2022で発表され、現在に至る「Reasoning(推論)」分野のすべての研究の原点として不動の地位を誇ります。

NeurIPS 2022で発表され、現在に至る「Reasoning(推論)」分野のすべての研究の原点として不動の地位を誇ります。

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コミュニティの評価・歴史的インパクト(1件)
  • 重みを一切更新せずプロンプトだけで知能の『創発』を引き出した、AI史上で最も影響力の大きい発見の一つ。

    原文を見る ↗
この読み方に出てくる言葉(3語)
思考の連鎖

答えだけでなく、中間の考え方を順番に文章で示す概念。

プロンプト

AIへ渡す指示や例を含む入力文。

創発

規模が大きくなったときに、以前は目立たなかった能力が現れる概念。

どんな問いに向き合ったか

従来の技術では計算量、メモリ、または推論・学習効率において重大なボトルネックが存在していた。

従来の方法と課題

計算資源の大量投入や既存の標準的アプローチに依存していた。

肝のアイデア

中間思考ステップの出力によりLLMの潜在的推論能力を解き放ち、後のReasoningモデル(o1/R1)へ直結した推論研究の始祖

どういうしくみか

プロンプト設計:各例題に問題 QQ、自然言語による中間論理展開 RR、最終解答 AA を構成。数理的観点では、一発予測 P(AQ)P(A|Q)P(AQ)=RP(AQ,R)P(RQ)P(A|Q) = \sum_R P(A|Q, R) P(R|Q) と展開し、サンプリングによって最も確からしい推論パスを辿らせます。LaMDA, GPT-3, PaLM等の複数モデルファミリーでスケールごとの挙動を比較しました。

どう確かめたか

著者らは、思考の連鎖(Chain-of-Thought)プロンプティングによる大規模言語モデルの推論創発における顕著な性能向上と計算効率の改善を実証

何が分かったか

その評価で著者らは、GSM8KにおいてPaLM 540Bが56.9%を達成(100B未満のモデルでは効果がほぼゼロであることを実証)。StrategyQAで77.8%(ベースライン67.8%)、Sports Understandingで77.1%を記録。記号操作タスク(Last Letter Concatenation)で正解率0%から極大値への急激な創発を確認

どこまで使えるか

射程は大規模モデルへのfew-shot例示と、算術・常識・記号推論の正答率です。小規模モデルでの弱い効果、例示への感度、生成されたrationaleの忠実性は別問題として残ります。

限界と未解決の問い

自己無矛盾性(Self-Consistency)のない単一サンプリングでは、誤った分岐に入った場合の復帰が不可能。小規模エッジモデル(7B〜13B)ではCoTの恩恵を受けにくいスケーリング制約

この研究から考える

ここからは、論文の結果を踏まえた編集上の考察です。

報告された規模依存の改善が他の推論課題でも再現するなら、モデルを更新せずに中間推論を誘導するプロンプトが有効な制御手段になります。ただし、効果はモデル規模と課題に依存し、生成された推論過程の忠実性はこの評価だけでは保証されません。